刺激的な見出しでお騒がせします、夕立P(@Yu_dachiP)です。先日、大量の同人CDを屋根裏にしまいこみながら「物質主義め!所有欲め!!」と自分を呪っていました。ダンボール3箱を用意してもまだ足りなかったCDですが、ぼくの場合は1度インポートしてしまったらこれらのCDはPC側で保存しているデータが消えてしまった場合のバックアップ程度にしかなりません。そのデータだって別付けのHDDに保存しています。「なんだってこんなにCDにこだわるんだ、むしろなんの考えもナシにCD作ってるだけじゃないのか」というのは過去に同人誌で他の方がコラム『で、いつまでCD売ってるの?』を執筆してくれましたが、ぼくはこの“CD”に恨みを込めて・悪意のある・偏った考えという最悪なのが3拍子揃った記事を書いてみました。なお、ただぼくがCDに思っていることを連ねただけの記事で、今後どうすればいいのかというのについては一切書いていません。ただのCDへの悪口です。最悪だコイツ!
CDの悪いところ
本当に恨みを込めて書きます。特にCDドライブが無いといけないところなんてホントに何年前のデバイスを使ってんの?って思っていますので。
CDは1度インポートしたら、余程のことがない限りもう使われることはない
CD愛好家とかいうのであればまた話は変わってきますが、明らかにマジョリティではないでしょう。iPodやスマホ、そしてmp3がCDで聴くという形態を破壊していったんだと思います。ポータブルCDプレイヤーで音飛びに気をつけながら聴くっていうのが懐かしい……
ケースは破損の可能性がある
特に引っ越しで移動する際や、イベント会場への持ち込み・持ち帰りでありえます。実際、結構気をつけていてもケース割れしてしまうことはありますので悲しいですね。物理媒体だと、それ自体の破損というリスクがあります。
基本的に個人間でも貸し借りしなくなった
個人の観測範囲での話で恐縮ですが、個人間でCDのレンタルをしたというのはここ10年くらい聞いたことがありません。同人音楽のクリエイター側でもリスナー側であっても、オススメするならその場に携帯プレイヤーで聴かせて「良かったら買ってね」という形が多い印象です(そのパターンならいくつも見ています)。
同人音楽CDは個人の都合でディスコンになる可能性が高い
在庫がなくなったから頒布終了、古い作品だから頒布終了……というのが個人のさじ加減でいくらでもできます。リスナー側としては過去の推しがそうした事情で消え去ってしまうのはもったいないなーって感覚ですが、デジタルリリースで残しておけない場合等は本当にもったいないと思います。これは作品のアーカイブ化が難しいことにもつながってきますね。
CDドライブがないと使えない
今時のノートPCやiMacだとCDドライブがオミットされている場合も多々あります。「俺の曲が聴きたいならCDドライブくらい自分で用意しておけ」っていうのは流石にクリエイター側の傲慢に思えるのですが、いかがでしょうか。
また「本当の音楽好きならCDドライブを所有している」という言説も目にしましたが、それと同じ言葉はカセットテープやレコードでも言えるのでは?とぼくは考えますね~。そのカセットテープやレコードは「当時それを使っていた世代」がまだバリバリ使っています。CDってもしかしてそういう”古い世代”が使ってるんじゃないの?っていうのがぼくの考えです。裏を返せば、つまりCDは「CDを使っていた世代が滅びるまで」新しい世代の人から文句を言われながらもバリバリ使われると思います。
管理・保有に場所を取る
とにかく場所をとるのもつらいところ。ぼくのようにダンボール3箱とかになるとそれだけで部屋や収納を圧迫します。この管理コストもなかなか馬鹿になりません。ぼくの中では「データだけあればいいや」ってなる一番の理由かもしれません。
CDのいいところ
なんだかんだCDにもいいところがあるのは認めざるを得ないですし、その部分がある故にクリエイターが作る媒体としても現役でいられるんだと認識していますので、その部分を書いてみます。
個人レベルでも制作が簡単にできる
CDドライブもCD-Rも既に枯れた技術で、比較的安価で簡単に個人でもCDという媒体で作品を作ることができるんですよね。紙ジャケットを刷るのもプリンター1台あれば容易ですし、コンビニプリントで済ませることもできます。あとはケースを用意すればそれだけで自主制作CDが組み上げられるんですよね。こんなにお手軽に、しかもそこそこ見栄えもよくできる媒体という意味ではCDより上のものは未だに出ていないと思います。なんだかんだダウンロードカードはイラスト等の表示面積が小さいですし。
業者に頼めば凝った装丁にもできる
こちらはお金の力に頼ることになりますが、商業作品にも引けを取らないような豪華な装丁の作品を個人レベルで作ることも可能です。この点でもダウンロードカードやその他の媒体では厳しいのが現状だと思います。
CDの容量や物理的なサイズ感は音楽体験に「ちょうどいい」
これが一番大きいと思います。まず収録時間、1枚につき最大で1時間ちょっとという視聴時間が、作品を楽しむのにちょうどいい。次に音質。今でこそハイレゾ音源など出てきていますが、CDに収録されている音質で(それ以下のmp3でも)満足してる人が多いのが現状だと思います。そしてジャケット・歌詞カード。時折トールケースに合わせたジャケット・歌詞カードを用意しているところもありますが、12cmCDのジャケットサイズでも歌詞は十分読めますね。可読性は若干落ちますが……
とにかく音楽体験をするのに、CDという媒体はちょうど良すぎるんです。
所有欲を満たせる
「この物質主義者め!!」とぼくが喚き立てている部分ですが、事実これを満たせるのは強いんですよね。人間の欲望そのものですもの。そしてCDという媒体は凝った装丁やジャケット(歌詞カード)、CDそのものの3点セットで訴求力を高めることができます。持ってること自体がステータスになるモノもありますからね……(プレミアの付いたやつとか)。
カーステレオはまだ標準装備されている
そもそも若者(特に都会の)が車を持たない時代になっているというのは聞いていますが……
カーステレオがまだ現役で、現行のものですとCDDBによる楽曲情報の取得やインポートもできるとのことで、車での移動が多い人には利用者もわりといる、とのこと。ただユーザー層が噛み合ってない気もしますけど。
制作にCDを使わざるを得ないという状況
例えば2次創作のアレンジ楽曲は(暗黙の了解で成り立っているところですので、原則アレンジ禁止な楽曲が収録されているCDがおおっぴらにM3等のイベントで頒布されているのはヒリヒリモノだと思いますけど……)頒布数が刷った・焼いた枚数に限定されるので、少部数なら営利目的のものではないという建前ができます。
他にもVOCALOID楽曲ですとデジタルリリースの敷居が若干高いところがあります。初音ミク公式ブログには以下のような記述があります。
(前略)個人のクリエイターの方による、弊社キャラクターを用いた物品の、非営利目的で、原材料費を回収する目的で対価を徴収する、対面での大規模とはいえない数量の譲渡につきましては、すでに定着した「同人文化」を応援する目的、およびファンの皆様の交流を促進する目的から、弊社の申請システム「ピアプロリンク」へのご申請をしていただくよう、お願いを申し上げております。
これに対し、個人のクリエイターの方による、デジタルデータのダウンロード販売につきましては、理論的には大規模の頒布を極めて低廉なコストで行えることから、弊社としては上記の目的に合致しないため、原則としてご許諾をいたしておりません(※)。
(※)例外として、個人のクリエイターの方による楽曲の配信につきましては、配信代行サービス「ROUTER.FM」を通じて行い、ピアプロリンクへ申請をいただいた場合について、弊社キャラクターの名称を付し、イラストをカバージャケットに用いての販売をご許諾いたしております。
Bandcamp等でダウンロード販売をするのはアウト、ってところですね。投げ銭に関しては不明ですけれど。
デジタルデータのダウンロード販売に関しまして | 初音ミク公式ブログ
上記について追記「キャラクター利用のガイドライン」
piaproの「キャラクター利用のガイドライン」から現状の規約を引用します。
B-3.作品のインターネットによる電子ファイル形態での有償頒布について ※6、※7、※8
営利を目的としない、作品のインターネットによる電子ファイル形態での有償頒布(以下、「ダウンロード等販売」といいます)については、ピアプロリンクに申請をしていただくことで、以下の2つの内容を当社との別途の契約なしに行っていただくことができます。なお、当社が別途承認した個人または法人格のない団体(いわゆるサークルを含みます)については、ピアプロリンクの申請を行うことなく行っていただくことができます。
当社キャラクターの二次創作物またはこれを含む作品を、電子書籍としてダウンロード等販売(委託販売(受託する者が個人か法人かを問いません)を含みます。以下において同じ)すること。
音楽作品またはそのミュージックビデオをダウンロード、ストリーミング、サブスクリプション等の方法でダウンロード等販売する際に、当社キャラクターの名称を使用し、または当社キャラクターの二次創作物をカバージャケットやミュージックビデオ内で使用すること。※6:上記の対象は記載された内容に限定され、ミュージックビデオ以外の映像、ゲーム、スマートフォンアプリ等は上記の対象に含まれません。
※7:当社が運営する楽曲販売委託サービス「ROUTER.FM」をご利用して音楽作品およびそのミュージックビデオをダウンロード等販売されるときは、ピアプロリンクの申請は不要です。
※8:ピアプロリンクへの申請後に発行されるピアプロリンク申請証(QRコード)を表示することが困難な場合は、QRコードに記された8桁の英数字(ピアプロリンク申請PK)を作品のクレジットに含めることで代えられます。
他のVOCALOID作品については、ROUTER.FMにある程度キャラクター利用のガイドラインのリンクが貼ってあります。参考までに。
ROUTER.FM FAQ|配信登録について
ちなみにぼくの作品である『After Rain』もROUTER.FMを通じてダウンロード販売しています。チェックしてね!(露骨な宣伝)
同人音楽の外から見た、同人音楽についての反応についても少し。
「CDプレイヤーを持っていない」という理由でCDを受け取れなかった学生さんらしき方の姿もありました。
CDプレイヤー・ドライブがノートPCからオミットされていたり、スマートフォンしか持っていない方が増えてきているのを考えるとあり得ない話ではないです。
https://r3magazine.info/bun-free-music-reaction/
これは主催が文学フリマというテキストジャンルのイベントに出展した際に、同人音楽に触れた同人音楽の外の人たちの反応のひとつです。現代ではあり得ない話でもないんだなというのを再確認しました。
まとめ
というわけでCDの悪いところを喚き散らして、それでもCDがまだ生き残るに値する面についても考えてみました。なんだかんだCDも媒体としては悪くない部分も多いですし、これに馴染んできた世代はずっと使い続けるんだろうという思いもある反面、CD媒体を選ぶのはあくまで自分の表現したいものに合致するか?というのを常に問い続けたいところですね。逆に言えば新しい媒体……ダウンロードカードやデジタルリリースを選ぶ場合、その選択肢でいいのか?新しいものに振り回されていないか?というのも考えていきたいところです。
でも物理媒体しかないって理由で2度と手に入らない作品ってもったいないですよねえ。どうにかならないかな。
余談ですが、冒頭で触れた『で、いつまでCD売ってるの?』というコラムはこちらで読めますので是非チェックしてみてください。
[amazonjs asin=”B01M7ZPW6Z” locale=”JP” title=”R3Magazine vol.2″]
追記
CDみたいなフィジカルな媒体を否定したらイベントも要らないのでは?というリプライをいただきました。
これについては「惰性だけでもやっていけるようなイベントなら要らなくね?」っていうのがぼくの見解です。また別で記事書いてみたいところですね~。
みんなで集まってワチャワチャできる+自分の作品を世に出すという、どちらも同人即売会というのでなくてもどうにかできるのでは?と模索している最中だったりします。近いものならデジタルリリースとオフ会のあわせ技で達成できちゃいそうですし?法律とかの問題もありそうなので下手なこと言えませんけどね。
コメント
音楽に限らない話なんですが、今どきのご時世だと特定のメディアだけに頼らず、複数のメディアを並行して走らせないといけないですよね。例えていえば銀行の手続きなんかでも紙媒体・PC・スマホそれぞれで出来るようにしとかなければいけないですし。なんにせよメディアを統一せずにいっそのこと全部対応しちゃうのが物事の主流なんじゃないかと思います。
こないだのM3でもちょいちょい見ましたが、カセットテープ&ダウンロードコードっていう両極端なスタイルで音楽売ってるひとたまにいます。音楽に即していうとこんな感じです。CDは当分死なないと思いますよ。